

建設業界において「生コン車が来ない」という悩みは、繁忙期になると必ず耳にする現場の声です。
コンクリート工事は一度始めれば途中で停められず、車両が遅れれば職人が手をこまねいて待機し、工期やコストに直結する工事となります。
特に秋から年度末にかけての繁忙期は、公共工事を民間工事が重なりやすく、需要が一気に手中するため、どの現場でも生コン車の確保が大きな課題となります。
なぜこのような問題が毎年繰り返されるのか、そして現場や経営にどの様な影響を及ぼすのか、どうすれば繁忙期でも安定した手配が出来るのか、本記事ではその実態と対策を整理してみます。
①繁忙期に生コン車が不足する理由
まず押さえておきたいのは「なぜ繁忙期に限って車両が無くなるのか」という点です。
原因としては以下の3つが考えられます。
■需要の集中
年度末の公共工事や民間工事の竣工ラッシュは、毎年の恒例行事となっております。
どの現場も同じ時期にコンクリート打設を行いたい為、プラントや車両の稼働が限界を超えてしまいます。
■供給能力の制約
生コンプラントには日毎の出荷可能量があり、これを超える依頼は受けられません。
更に、輸送を担うドライバーも不足しており、働き方改革による労働時間の上限規制も相まって、車両の稼働時間そのものが短くなっています。
■天候の影響
雨天や猛暑によって打設備がズレると、延期分が次の日に集中して一気に需要が高まり、計画通りの供給が崩れてしまいます。
②現場に与える影響

生コン車が予定通りに来ないと、現場には様々な悪影響が及びます。
打設が遅れると以下のような支障が出てしまいます。
■工期遅延
急な仕様変更や天候によって打設スケジュールがずれ込むと、後続工程に遅れが連鎖し最終的には工期遅延リスクに繋がります。
■職人の待機ロス
打設を待つ数時間はただの「空費」となり人件費が膨らみやすいです。
繁忙期は人手も不足している為、無駄な拘束は現場の士気低下にも直結。
■品質への影響
コンクリートは打設のテンポが重要出、間があくとコールドジョイントが発生したり、仕上がりの美貌や強度に支障をきたします。
特に大規模なスラブや基礎打設では、複数の車両が連続して到着する事が必須です。
■元請や施主との関係悪化
元請や施主との関係悪化というリスクも生じます。
現場の責任でなくとも「なぜ予定通り進まないのか」と問われる場面は少なくありません。
③実務的な対策
こうした問題に対して現場で出来る対策は幾つか考えられます。
■早期予約
全国生コンクリート工業組合連合会の調査によると、2024年度の稼働率は年度末で90%超に達しており、予約難が常態化しているとのことです。
繁忙期は1ヶ月以上前からスケジュールを押さえておき、余裕を持った手配を徹底する事が重要で す。
工程表を前倒しで組み、プラントに相談しておくだけで、他現場に先んじて枠を確保できます。
■複数のプラントとの関係構築
普段から特定のプラントだけでなく、複数社と取引を持っておくことで、万が一の際に融通が利きやすくなります。
■現場間の調整
同一会社の複数現場で打設日が重なれば、自ら競合を生んでしまう事になります。
繁忙期は特に、社内で調整する事で分散化を図れ、結果的に全体の安定に繋がります。
■予約時間や曜日をずらす
・時間調整:現場の周辺環境にもよりますが、需要が集中する午前中や昼間を避け、夜間や早朝に手配する事で、車両の確保がしやすくなります。
ほかにも、「夕方打設を提案する」「第一便じゃなくてもOK」と事前に伝えておくと、割り込み易くなります。
・曜日調整:大安吉日・月曜日・金曜日は予約が埋まりやすいため、避けるなどの工夫も効果的です。
■予約を分割する
一気に大量に打設をしたいとなると、車両台数が必要となり押さえにくいです。
そのため数日に分けるなどで「少量・短時間便」に分割すると割り込みやすくなります。
■ポンプ屋や打設班との連携強化
プラントは待たされる現場を嫌います。
打設 開始に遅れが出ないよう、人員をきっちり整えておくと、次回の予約が優先されやすくなります。
逆に、車両が遅れた場合に備え、柔軟に対応できるチーム体制を整えておくことで、信頼関係を構築しやすくなります。
④中期的な改善の方向性
その場しのぎの対応だけでなく、中期的な仕組みづくりも必要です。
■協力会社との契約形態の見直し
打設工事を頻繁に行う会社であれば、年間を通じて一定量の取引を約束する「繁忙期優先枠」のような取引をすれば、繁忙期であっても安定供給を確保しやすくなります。
■ICT施工の活用
工程管理システムや打設シミュレーションを用いる事で、必 要な車両台数や時間を制度高く算出でき、プラントとの調整も効率的になります。
また、最近一部エリアでは、「生コン車の空き状況を共有するアプリ」も導入され始めております。
特に都市部では、アナログな電話1本より効率的に予約が可能となるので、会社の事業エリア内にそういったアプリがあるのか、確認してみることも手の1つかと思います。
■補助金や助成金の活用
国や自治体が提供する、人材確保や物流改善関係の補助金などを活用する事も、選択肢の1つです。
ドライバー不足や輸送効率化に向けた投資を後押しする制度は多く、そうした制度をうまく活用すれば対応力が底上げされるでしょう。
■施主への理解促進
繁忙期には様々なリスクが付き物です。
上述したリスクを事前に説明しておくだけで、遅延や変更にも理解を得やすくなります。
透明性の高い情報共有は信頼関係の維持に欠かせません。
⑤まとめ
繁忙期の生コン車不足は業界全体が抱える構造的な課題です。
しかし、その中でも「早めの予約」「複数のルート確保」「現場間の調整」といった地道な工夫は、時間はかかるかもしれませんが確実に効果を発揮してくるでしょう。
最終的に鍵を握るのは「現場の調整力」と「会社としての準備力」です。
小さな工夫が工期全体の安定に繋がり、施主からの信頼も直結します。
繁忙期を乗り切るためには、目先の対応と中長期的な仕組みづくり、その両輪を意識した取り組みが不可欠と言えるでしょう。





