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偽装一人親方問題とは

1月18日

読了時間:7分

トータルサポート株式会社

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建設業界では「偽装一人親方」として発注者に不当搾取されている方がしばしば見られます。


本記事では偽装一人親方の概要や問題点、偽装一人親方にあたるか否かの判断基準など、解説していきたいと思います。





■偽装一人親方とは


いわゆる「偽装一人親方」とは実質的に労働者と評価すべき一人親方の事です。



■偽装一人親方問題とは


未熟な技能者を一人親方として独立させて請負契約を結びながらも、実際には直接指示・命令を出して労働者と同様に労働をさせる事を、「偽装一人親方問題」と呼びます。


本来の一人親方とは、「請け負った工事に対し自らの技能と責任で完成させる事が出来る現場作業に従事する個人事業主」の事で、指揮命令関係は生じません。


この問題は、作業員の処遇低下や健全な競争環境を阻害する、大変重要な問題です。


雇用されている労働者は、労働基準法や労働契約法によって守られ、残業時間や給与などが保障されています。


解雇にも非常に厳しい制限が課されております。


また、社会保険・雇用保険・労災保険への加入が必須なので、万が一の時の保障も設けられています。


この様なメリットを手放して迄偽装一人親方が蔓延するのは何故でしょうか。



■偽装一人親方問題が起こる理由


国が推奨する「社会保険加入対策」と「働き方改革」、この二つの施策が関係している様です。


それぞれの施策の内容や、偽装一人親方問題との関りについて、詳しく見ていきましょう。



①社会保険加入対策


建設業の労働環境改善による人材確保のため、国は2012年から社会保険加入対策を推進。


2020年には、建設業の社会保険加入が建設業許可取得・更新の要件として位置づけられ、建設業許可を首都高するためには義務化されています。


また、2024年には加入への条件が一層緩和され、同時に年収の壁対策も行われたことで、これまで勤務時間や賃金が足りず加入できなかった方も加入できる様になり、更に働き控えをして扶養内調整をしていた方も加入するようになりました。


しかし、社会保険に加入した場合、社会保険料などの法定福利費を企業側が負担しなければいけなくなり、この法定福利費の経費を削減するために、偽装一人親方化が進むことが懸念されています。



②働き方改革


労働者の多様な働き方や労働環境の見直しのため、2018年に働き方関連法案が成立しました。


2024年からは建設業界にも、罰則付きの労働時間の上限制限が設けられ、大きな話題を呼びました。


労働時間の上限規制のほか、有給休暇の取得義務など、様々な見直しが行われており、影響も大きくなっています。


一方で、一人親方の場合は成果物に対して報酬を支払うため、残業代や休出手当などを支払う必要がなく、また労働時間の制限なども設けられていません。


更に、有給休暇を取得させたりする必要もないので、企業側からすれば労働力が確保できます。



こういった背景から偽装一人親方が増え続けています。


企業側からすれば良い所取りが出来るかもしれませんが、労働者側から見ればデメリットが大きいです。


企業が一人親方を不当に搾取するという点で大いに問題がある状態といえます。



■偽装一人親方のリスク


①就労に関するリスク


前述した通り偽装一人親方には労働時間や休日などの規則がありません。


万が一ケガや病気で働けなくなってしまうと、会社員としての保証が受けられません。


更に、従業員としての給与が保障されないので、適正な報酬が受け取れなくなる可能性もあるなど、様々なリスクが隠れています。


一方で、企業側は偽装請負であると判断された場合、労働基準法に違反した事になります。


建設業の許可が取り消される事もあるので、絶対に行わないようにしましょう。


最悪の場合は懲役刑になる可能性もあります。



②社会保険に関するリスク


労働者を一人親方化していた場合、雇用していない事を理由に、社会保険へ加入しておらず、保険料を納付していないはずです。


本来であれば加入しなければならない社会保険に加入していない場合、以下の法律に違反する事になり、さかのぼって保険料を納付しなければなりません。


・労働保険の保険料の徴収等に関する法律

・健康保険法

・厚生年金保険法

・雇用保険法


また、社会保険に未加入だと労災事故に遭った際に補償が無く、治療医を全額自己負担しなければなりません。


他にも育休や産休などのいざという時の公的補償が受けられないです。



③税金に関するリスク


労働の対価として賃金が支払われている場合、事業主が所得税や住民税の特別徴収しなければなりません。


偽装請負における一人親方化を行っている場合は、事業主から納税をしていないため、以下の法律に違反している可能性があります。


・所得税法

・地方税法


企業側は税金の滞納ではなく脱税となり、懲役刑や罰金刑が科されます。



■適正な一人親方の定義とは


国土交通省は「技術力」「責任感」の二つの面で、適正な一人親方の定義を考えています。



①技術力


主に以下の様な技術力を持っている場合に、一人親方として適正であると考えられています。


・建設業許可の取得

・職長クラス、建設キャリアアップシステムレベル3

・実務経験が10年以上かつ、多種の立場を経験

・専門工事技術のほか、安全衛生など様々な知識の習得

・各種資格の取得


一つの事に対してだけでなく、様々な知識や技術を長い経験で培ってきた方が、適正な一人親方として考えられます。



②責任感


主に以下の様な事に責任を持てる場合、一人親方として適正であると考えられます。


・建設業法や社会保険関連法令、事業所得の納税などの法令を遵守

・適正な工期や請負金額で契約締結

・請け負った契約に対し業務を完遂

・他社からの信頼や経営力


業務に対する責任だけでなく、法律や税制や経営など様々な知識を持って、責任を果たせる方が適正な一人親方だと考えられます。



■まとめ


偽装一人親方の問題は建設業界において長らく横行していますが、本来は一人親方という働き方には問題はありません。


しかし、偽装請負をする一人親方が増えると、作業員の負担が増えたり、労働者としての権利が得られなかったり、多くの問題が発生しています。


技術不足や経験不足のまま一人親方になってしまうのが問題です。


今一度自分が適正な一人親方であるのか、それとも雇用されるべき労働者なのかや、気付かぬうちに偽装一人親方になってしまっていないか等、この機会にチェックをしましょう。


□発注者からの依頼を断る自由があるか

□仕事の量・配分・進め方などについて、発注者から毎日具体的な指示を受けていないか

□始業・終業の時間は発注者が決めていないか

□都合が悪くなった際に仕事の代役が立てられるか

□報酬が日給制ではなく出来高制であるか

□仕事で使う機械や器具などを発注者が用意していないか

□他社の業務を受注する事を実質的に制限されていないか

□労働者と同様の服務規定が求められていないか


また、一人親方として仕事をするために、500万円以上の工事を受注したい場合は、建設業の許可を取得しましょう。


将来的な仕事の可能性を広げるためには、建設業許可の取得を検討しましょう。


そして、偽装一人親方にあたる働き方をしている方、発注者から不当に搾取されている方は、早めに弁護士までご相談下さい。


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