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人口減少時代に求められる“賢い都市”~コンパクトシティの特徴や役割について~

5月25日

読了時間:6分

トータルサ��ポート株式会社

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日本の地方都市を中心に「コンパクトシティ」という言葉が注目を集めています。


少子高齢化や人口減少、それに伴う税収入の低減 ――

こうした現実の中で街をどう維持し再開発していくか、これは行政だけでなく建設業界にとっても、避けては通れない課題の一つとなります。


本記事では、「コンパクトシティとは何か」「どんな特徴があるのか」「なぜ必要とされるのか」を、将来展望や建設業界の視点を交えて紐解いてみましょう。



ーコンパクトシティとは


都市機能や人口を物理的に集中させ、効率的かつ持続的に接続できる様、設計された都市の事を指します。


・住民、医療、商業、交通等の生活機能を一体的に集めたエリアの形成

・郊外の開発を抑え中心部へ再集約を図る土地活用

・公共交通機関の活用を前提とした都市構造

・高齢者や子育て世帯にも暮らしやすい街づくり


コンパクトシティの特徴としては上記のような点が挙げられます。


この考え方は1990年代に欧州で発展し、日本でも2000年以降、地方都市で取り入れられる様になりました。



ーなぜコンパクトにするのか


都市がコンパクトにならざるを得ない理由は明確です。


・人口の減少や高齢化

 インフラを維持できるだけの利用者はなく、ただでさえ少ない人口は都市部へ流出。

 これにより、地方自治体の税収は減少し続けている、という現実があります。


・拡散した都市構造には大きな弊害が

 移動距離が長くなると公共交通の採算が合いません。

 これにより、電車やバスが通っていない、或いは便の本数が少なく、不便な暮らしに。


・空き家空き地の増加

 郊外の住宅地がスカスカになり、防災や治安にも影響を与えます。

 

これらを背景に「コンパクトシティ」という発想が必然的に求められるようになりました。



ーどの程度の規模をコンパクトというのか


明確な㎡単位の定義はありません。

しかし多くの自治体では以下の様な考え方で規模を設計しています。


・徒歩圏で日常生活を完結できる

・公共交通から半径1~2km圏内を生活圏内核に


他には、市全体を1つのコンパクトシティとして、その中に更なる拠点を作る「多核型」もあります。


例えば、富山市では路面電車の路線沿線を中心に市民の生活を再配置する、「コンパクト+ネットワーク型」の都市計画が進められています。



ーコンパクトシティの魅力と可能性


都市を小さくすると聞くとネガティブな印象を与えるかもしれませんが、コンパクトシティにはポジティブな魅力が数多くあります。


・移動が楽になる

 生活がしやすくなり高齢者や子育て世代に優しい街に。


・公共交通を維持しやすくなる

 地域の人みんなが同じ道路や電車を利用すれば、補修する道路の取捨選択も簡単になりますし、電車では一定の利用者を確保し続けられるようになります。


・行政コストを抑えられる

 上記の通り、維持するインフラを選択することで、余った税金の有効活用が出来る様に。


・街に賑わいや活気が戻る

 商業・福祉・教育が集積し、老若男女が集まる街になります。


・防災性が高まる

 分散しているよりも集中している方が防災対策がしやすくなります。


コンパクトシティとは未来への投資であり、賢くしなやかな都市をつくる手段です。



ーコンパクトシティを進める地方自治体の取組み


実際に日本各地でコンパクトシティの実現に向けた動きが進んでいます。

中でも先進的とされる都市を以下でご紹介しようかと思います。


宇都宮芳賀ライトレール線の写真

①富山市(富山県)

全国で最も先進的な事例といっても過言ではありません。

これまでの富山市には、車を使えない人には極めて生活しにくい街、という課題がありました。

そこで、次世代型路面電車(LRT)を軸に、中心市街地への居住促進や、医療・福祉・商業の集約を進め、若年層や高齢者の移動負担を軽減し、住みやすい街に生まれ変わっています。


出典:富山市役所|(https://www.city.toyama.lg.jp/shisei/machizukuri/1015125/1006102.html)


出典:COMPACTCITY TOYAMA|(https://www.city.toyama.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/006/102/2023_toshigaiyo.pdf)



②青森市(青森県) 

「青森市都市再生整備計画」に基づき、人口減少を前提としたエリアの見通しを実施。

拠点地区への投資と、郊外インフラの統廃合を、並行して進められています。

豪雪地域である青森市の除雪費削減や、郊外の無秩序な開発行為の抑制等、課題解決に繋がっています。

複合型商業施設「アウガ」は、運営課題や郊外との競争激化により閉店してしまいましたが、この失敗を活かし引き続き都市づくりを進めていく事が期待されます。


出典:青森市役所|https://www.city.aomori.aomori.jp/shisei/machizukuri/1005734/1005778/1005782/1005788.html)



宇都宮市(栃木県) →資料1・資料2

国内初のLRT新設により、都市の再構築を推進中です。

新たな公共機関を核にしながら沿線の都市機能を再編し、住まいや商業施設の集積を誘導しています。

またこちらも国内初である地域連携ICカード(totra)を導入させました。

宇都宮市では、「都市をコンパクトにする事」と「都市をスマートシティ化させる事」の2軸で、都市の再開発が進められております。


出典:宇都宮市|https://www.city.utsunomiya.lg.jp/shisei/machi/1034530/1007653.html


出典:宇都宮市|https://www.city.utsunomiya.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/023/188/chu3mirai2.pdf)



④北九州市(福岡県) 

市街地の空洞化対策として、旧市街地の再活性化に取り組む一方、都市機能の選択と集中を進行しています。

再開発とセットで、地域密着型の生活機能である医療や福祉を集約するプロジェクトが、複数進められています。


出典:北九州市|(https://www.city.kitakyushu.lg.jp/files/000722525.pdf


出典:北九州市|(https://ssl.city.kitakyushu.lg.jp/files/000723163.pdf



ー建設業に求められる役割


建設業や建設コンサルタントは、都市再構築において重要なプレイヤーです。


・都市機能の設計

・依存インフラとの統廃合

・都市やインフラのデザイン

・住民と行政との合意形成支援

・災害や気候変動を考慮した防災都市づくり

・建設時から考えられた維持管理の立案


今までは「淡々とに作る仕事」でも良かったですが、これからは「設計やデザインで守る仕事」へ、建設業に求められる事がガラっと変わってきます。

建設業の存在価値がより深く問われる時代でもありますね。



ーまとめ:縮む都市の再設計を担う建設業


これからの日本は人口が減り、都市も小さくならざるを得ません。


税収入の減少や維持管理に避ける人手の減少で、全ての道路や施設を維持する事は難しく、街を「選んで残す」「効率よく集める」必要があります。


コンパクトシティはそうした現実に対応するための具体的な手法です。


「縮小」はネガティブな意味で捉えられやすいですが、暮らしやすくするためのポジティブな選択です。


そして、コンパクトシティを創るための建設業は、計画作りから設計・整備・維持管理まで、あらゆる場面で中心的な役割を果たします。


これからの建設業は、地域の未来を守る”都市の再設計者”としての力が求められます。











5月25日

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