
積算の基本となる歩掛とは、作業に必要な手間を数値化したもので、労務費の算出に欠かせない要素です。
材料の種類や作業をする人の熟練度などにより作業時間が変わるため、作業量を表す人工と歩掛を用いる事で、より適正な工事費用を算出する事が可能となります。
本記事では、積算における歩掛の基礎知識や、歩掛によるメリット等を解説していきます。
目次
step1:歩掛の概要・計算方法
step2:適正な労務の算出に必要
step3:標準歩掛を利用する
point1:見積もり精度が上がる
point2:赤字を回避できる
point3:経営の効率化
point4:スケジュール調整がしやすくなる
point5:信頼が得られる
┃まとめ
┃積算業務における歩掛の基礎知識
step1:歩掛の概要・計算方法

歩掛を簡単にいうと「1つの作業を行うための手間を数値化したもの」です。
作業する人の経験年数によって、作業にかかる時間には差があります。
その差を係数として考慮したものが歩 掛となります。
人工という言葉でよく出てきますが、同じようなイメージで大丈夫です。
1人工=8時間で行える作業量を表しているため、
歩掛(人工)=(1人×必要な作業時間)÷8時間で計算が出来ます。
例えば、照明器具Aを1人で取り付けた際に1台に1時間30分の時間を要するとすれば、
(1人×1.5時間)÷8時間=0.18歩掛(人工)となります。
同じ照明器具を7台取り付ける場合は、0.18×7台=1.26歩掛(人工)となります。
1人工が8時間のため、1.26歩掛( 人工)×8時間=10.08時間
7台の照明器具を取り付けるために、10時間程度が必要だと算出できます。
但し、使用される材料だけでなく作業内容や現場環境によっても、作業時間が変わるため、条件毎に調整が必要となります。
step2:適正な労務費の算出に必要

工事によって使用する材料や施工方法など条件が異なるため、単純に作業時間だけで労務費を算出すると、手間がかかる工事の場合は赤字になる可能性も出てきます。
使用する材料や施工方法、作業環境や作業場所、作業員の熟練度等、条件毎に異なる作業量(歩掛)で算出しましょう。
step3:標準歩掛を利用する
1つ1つの材料毎に歩掛を使用して労務費を算出すると、積算業務が膨大となり大変になってしまいます。
その為、実際の積算業務では国土交通省の「公共建築工事標準単価積算基準」を参考にするのが一般的です。
1つ1つの材料ごとに標準歩掛が細かく記載されています。
※標準歩掛は、健康な青年を想定したものですので、実際に従事する作業員の年齢や経験は、別途積算に反映させる事をお勧めします。
ネジなどの細かい材料を指す「雑材料」の係数も掲載されているので、工事の見積もり作成が初めてという方に役立つかと思います。
┃歩掛を使用するメリットとは
point1:見積もり精度が上がる

歩掛で適正な労務費を算出できると見積もりの精度向上に繋がります。
国土交通省が出している標準歩掛と、自社の作業員で算出した歩掛を擦り合わせる事で、ズレを解消できるかと思います。
point2:赤字を回避できる
事前に適正な見積もりを算出できると、赤字工事の受注を回避する事ができます。
どんぶり勘定で見積もりを出してしまうと、後になって赤字になってしまう事も多いですが、歩掛を使用する事で赤字になるリスクを減らす事が出来ます。
point3:経営の効率化

適正な労務費を把握する事で経営状況の分析も精度が高まり、課題や強みを把握する事で利益の向上にも繋がります。
一方で、歩掛は材料や作業ごとに計算をするため、膨大な手間と時間がかかります。
計算箇所が多いためミスが起こりやすいため注意が必要となります。
近年では歩掛を使用した見積もり作成ツールなども数多く出ているので、計算ミスが心配な場合はツールを使用する事をお勧めします。
point4:スケジュール調整がしやすくなる
