
災害や感染症など、危機的な状況に直面した場合に、事業を継続させられるかどうかは、企業にとって非常に重要なことでしょう。
こうした状況に陥った際に、出来るだけ早期に復旧させるための対策を、策定できていますか?
特に建設業は社会インフラの維持や復旧に貢献するため、他業種に比べて早期復旧の重要度が高いといえます。
そこで今回は、建設業におけるBCP対策の重要性、メリットや策定の方法などについて、本記事で解説をしていこうかと思います。
◆BCPとは?
Business Continuity Plan(BCP)は事業継続計画とも呼ばれ、自然災害や感染症などの緊急事態が発生した場合に、重要な事業を可能な限り早期に復旧させるための、方針・体制・手順を含めた計画の事を指します。
その為BCPは深刻なダメージが生じた場合を前提に作成されます。
◆BCPが重要なワケは?
大規模な災害時の建設業は、インフラの復旧や瓦礫の撤去など、重要な役割を担います。
また道路整備や仮設住宅の建設など、社会的な使命を果たす業種であります。
建設業に社会活動の回復がかかっていると言っても過言ではありません。
そのため建設事業の停止や遅延は被災地域に大きな影響を与えます。
更に 、地域住民や顧客や取引先、金融機関からの信頼も高まるでしょう。
このように、BCP対策を行う事で、自社の事業継続だけでなく、社会全体の早期復興や、社会的信頼にも繋がってきます。
◆BCP対策の現状と課題
│建設業における策定の現状

参照:「令和5年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」内閣府 防災担当
令和5年に内閣府が行ったBCP策定状況の調査では、金融・保険業の76.6%、運輸・郵便業の66.2%に次いで、建設業は63.4%と高い割合となっています。
各地で頻発する地震や新型コロナウイルス感染症の蔓延を受け、危機意識の高まりが伺える結果となりました。
│建設業における策定の課題
前述した通り、業界全体でみると他業界と比較して、高い水準です。
参照:「令和5年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」内閣府 防災担当
しかし、企業規模によってまだまだバラつきがあり、令和5年度に内閣府が行った実態調査では、大企業では策定率が76.4%となっていますが、中小企業では策定率は45.5%となっています。
中小企業では、BCPの策定に必要な人手や時間、ノウハウやスキルの確保が難しく、低い水準になっていると思われます。
また、策定したところで効果が見えないことや、策定にかかるコストが不透明なこともあり、策定までの一歩が踏み出しにくくなっています。
◆国土交通省の認定制度
国土交通省の認定制度とは、建設会社における災害時の事業継続力を評価し、適合した会社を認定する制度となります。
認定制度のメリットとしては、認定を受けた会社は自社の非常時の事業継続力をアピールできると共に、行政が発注する工事において優遇される可能性があります。
国土交通省や地方整備局が提供するガイドラインを参考にして作成するのがオススメです。
評価ポイントとしては以下の様な事が挙げられます。
・定期的にBCPの見直しや改善を行う事
・災害時に重要な業務を優先出来るように、業務の分類や目標時間を明確にする事
・災害時に対応できる組織や役割を決め、連絡体制や情報共有の方法を確立する事
・災害時に事業を継続できる拠点や備品の確保や、バックアップの分散化の対策をする事
・災害時に必要な人員や資機材の確保のために、協力会社や関係機関との連携を強化する事
・訓練やシミュレーションを実施し問題点や改善点を洗い出す事
◆BCPの策定方法
│step1. 事業継続力強化
事業継続の重要性や必要性を明確にする事で、BCPの基本的な方針や体制を決められます。
*災害時の対応体制や連絡体制を明確にする事で事業復旧が早まります。
│step2. 中核事業と復旧優先事業の選定
step2では各事業の内容や特性を分析し、中核事業と復旧優先事業を選定しましょう。
また、2つの事業に必要となる資源や、関連する業務も洗い出します。
│step3. 重要業務の特定と目標復旧時間の設定
step2で選定した業務から重要業務を特定し、各業務ごとに目標復旧時間を設定します。
この際にあわせて、業務中断の時限性を評価し、中断による影響を測りましょう。
事業中断の間にどれだけの損失が出るかを計算しておく事で、事業継続のために必要となる経営資源を確保しておけます。
│step4. 事前対策の検討
重要業務の復旧に向けて事前にできる対策を検討しましょう。
また、事前対策にかかる費用対効果や、実施時期等を整理しましょう。
実際に事前対策を実施し、効果をモニタリング出来ると、なお良いかと思います。
*災害時に必要な備品や物資を備蓄したり、安全な避難経路を確保しておきましょう。
*また書類などを全てクラウド保存する事で、災害時でも書類の紛失を防いでくれます。
│step5. BCP策定
ここまで分析と検討を重ねれば、いよいよBCPの様式や内容を決め、文書化します。
文書化して終わりではなく、会社全体で周知を徹底し、教育をしていきましょう。
│step6. 定期的に見直しや訓練
BCPの周知が完了したら災害時を想定した訓練を行いましょう。
訓練で露わになった問題点や課題点を改善する事で、より効果の高いBCPが出来上がっていく事でしょう。
*第三者視点を入れての訓練がより効果的だと言われています。
◆まとめ
本記事では建設業におけるBCP対策の重要性や、策定ポイントなどについて 紹介しました。
人手不足のなか日々の業務に追われ、BCP対策を検討する時間が整っていない、と感じる企業もあるかもしれません。
しかし、災害後に如何に早く復旧するかで、損失も信頼も変わってきます。
そして早期復旧は何となくでは出来ません。
事前の対策や体制の周知、災害を想定した訓練を重ねて、やっと可能になります。
最近多くなってきている施工管理アプリなどでは、アプリ1つで書類のクラウド保存や災害時連絡など、幅広く対応している物もあります。
思っているより簡単にBCP対策が出来るようになってきています。
被災して後悔する前に行動をおこし、BCP対策を行っておきましょう。