
特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律である、「フリーランス・事業間取引適正化等法」が、令和5年5月12日に交付され、令和6年11月1日から施工されました。
本法についてポイントになる箇所等を解説していきます。
│フリーランスとは?

本法においてはフリーランスは次の様に定義されています。
・授業員を使用しないもの
・法人であっても、自分1人以外に役員が無く、従業員を使用しないもの
ただし、契約名称が業務委託であったとしても、働き方が労働者に該当する場合には、本法は適用されず、労働基準法等の「労働関係法令」が適用されます。
つまり、契約上の名称を指すのではなく、実際の働き方が重視されます。
建設業界では「一人親方」と呼ばれる個人事業主がいますが、従業員を使用せずに施工主から仕事を請負う「一人親方」も、このフリーランスに該当する事になります。
ご自身が「フリーランス」にあたるのか、「労働者」にあたるのかは、国土交通省の働き方チェックリストで確認してみましょう。
▶あなたの働き方をチェックしてみましょう│厚生労働省
│法律制定の背景
発注者とフリーランスの取引において、以下の様なトラブルが頻発しており、問題視がされています。
・一方的な発注の取消し
・報酬の不払いや不当な値下げ要求
・発注者からのハラスメント
上記の様なトラブルの背景には、個人として業務委託を受けるフリーランスと、組織として業務委託を行う発注者の間に、交渉力や情報収集力の格差が生じやすいためであると考えられます。
フリーランスと発注者の取引の適正化や、フリーランスの就業環境の整備を目的に、本法が制定されました。
│対象となる取引の内容
本法の適用条件には業種や業界への限定は無く、発注者からフリーランスへ委託する、全ての業務が対象となります。
│法律の内容

一人親方に業務委託をする発注者に対し、以下の様な業務を設けています。
1.取引条件の明示義務(第3条)
ただちに取引条件を正面または電磁的方法により明示しなければなりません。
電磁的方法とは、メールやSNSでのメッセージ機能の事を指しますが、フリーランスから書面交付を求められた場合は、遅滞なく書面を交付する必要があります。
【明示すべき事項】
①発注者とフリーランスそれぞれの名称
②業務委託に合意した日
③委託する業務内容(品目・規格・仕様・数量など)
④期日(いつまでに納品するのか、いつ作業をするのか)
⑤場所(どこに納品するのか、いつ作業をするのか)
⑥完成後に検査をする場合は検査を完了する期日
⑦報酬の額、支払期日(具体的な報酬を記載する事が難しい場合は算定方法で可、しかし支払期日は具体的な支払日を特定する必要がある)
⑧現金以外で報酬を支払う場合は支払い方法
※⑥⑧は該当する場合のみ明示が必要な事項
明示すべき事項の中に未定事項がある場合は、未定事項の内容が決まる予定日を明示し、未定事項が決まり次第ただしに明示する必要があります。
その際には当初の明示との関係性が 分かるように、「この書面は〇年〇月〇日付け発注書の記載事項を補充するものです」等、を記載するようにしましょう。
2.期日における報酬支払義務(第4条)
上述した通り支払期日は具体的な日を特定できる様に定める必要があります。
「~まで」「~以内」という記載はいつが支払期日なのか曖昧な為、支払期日を定めているとは認められていないので、「〇月〇日支払」「毎月〇日締切、翌日〇日支払」等と記載をしましょう。
またこの支払期日ですが、納品日から起算して60日以内かつ、60日以内のできる限り短い期間内で支払期日を定めなくてはなりません。
3.発注者の禁止行為(第5条)
1ヶ月以上の業務委託をして言う発注者には、7つの禁止行為が定められています。
フリーランスが合意していても法律違反となるので十分注意が必要です。
【7つの禁止行為】
①受領拒否
発注者の一方的な都合による発注取消しや、納期の延期は受領拒否にあたります
②報酬の減額
原材料の下落による報酬の減額や、振込手数料を勝手に報酬に含ませた等もNGです
③返品
明確な不良品のほかに返品は認められていません
④買いたたき
⑤購入・利用共生
⑥不当な経済上の利益の提供要請
委託内容に含まれていない作業を無償で行わせる等は禁止行為にあたります
⑦不当な給付内容の変更ややり直し
定めていた基準より厳しい検査をしてやり直しを求める等は禁止行為です
4.募集情報の的確表示義務(第12条)
発注者が広告によりフリーランスを募集する際は、虚偽の表示や誤解を与える表示をしてはならず、正確かつ最新の内容に保たなければなりません。
5.育児介護等と業務の両立に対する配慮義務(第13条)
発注者はフリーランスからの申し出に応じて、6ケ月以上の期間で行う業務委託について、妊娠・出産・育児・介護と業務を両立できるよう、必要な配慮をしなければなりません。
【具体例】
①「つわりにより業務に対応できなくなる場合の事を事前に相談したい」
との申し出に対し、そのような場合の対応について、予め取決めをすること
②「子の急病のため予定していた作業時間の確保が難しくなったので、納期を短期間繰り下げたい」
との申し出に対し可能な限り納期の変更をすること
6.ハラスメント対策に係る体制整備義務(第14条)
フリーランスの就業環境を害する事の無いよう、相談対応のための体制整備など、必要な措置を講じなければなりません。
例えば、相談窓口を設置しフリーランスへ窓口を周知させる等、適切な対応の為の必要な措置を整備しましょう。
7.中途解除等の事前予告・理由開示義務(第16条)
発注者は6か月以上の期間で行う業務委託について、契約の解除又は不更新をしようとする場合、例外事由に該当する場合を除いて、解除日又は契約満了日から30日前までに、その旨を通知しなければなりません。
事前予告の理由開示は、「書面交付」「FAX」「電子メール」等、いずれかの方法で行われなければなりません。
│違反行為への対応
フリーランスは発注者に本法違反を思われる行為があった場合には、公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省に対して申し出る事ができます。
行政機関は申し出の無いように応じて、報告徴収や立会検査といった調査を行い、発注者に対して指導や勧告を行い、従わない場合は命令や公表をすることが出来ます。
また発注者はフリーランスが行政機関に申し出た事を理由に、契約解除や今後の取引停止などの、不当な扱いをしてはなりません。
│まとめ

フリーランス・事 業間取引適正化等法の施行に伴い、一人親方を含むフリーランスの取引環境が改善される事が期待されます。
これまでフリーランスの不安要素であった、出産・育児・介護との仕事の両立や、不当な委託内容であった部分も安心できる様になり、フリーランスの働きやすさが確保される事でしょう。
発注者は気が使かず法律違反をしない様に、フリーランスは自分の権利を守る為に、本法を正しく理解しておきましょう。
何かトラブルがあれば問い合わせ窓口に相談してみてください。
参考資料:ここからはじめるフリーランス・事業者間取引適正化等法(R6.11.1施行)│厚生労働省
参考資料:フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ│厚生労働省